SIADHと診断する基準
低ナトリウム血症を認め、
この患者さんはSIADH(ADH不適切分泌症候群)かな?と思ったときの
診断の基準を2つお示しします。
両方とも似たような項目ですが、
1つは、NEJMに掲載されている基準
1つは、日本で特定疾患として申請に考える基準 です。
SIADHと診断する基準
まず、NEJMから引用させていただきます
(The Syndrome of Inappropriate Antidiuresis:NEJM 356;20 may 17, 2007)
以下は上の表の日本語バージョンです。
必須所見
@ 血清有効浸透圧↓(血漿浸透圧<275mOsm/kg)
A 尿浸透圧>100mOsm/L
B 体液量が正常
C 尿Na排泄>40mmol/L
D 副腎、甲状腺機能正常
E 利尿剤の使用がないこと
参考所見
血清尿酸値<4 mg/dL
血清尿素窒素< 10 mg/dL
FENa > 1 % ,FEUN > 55%
生理食塩水投与で改善しない
水制限にて低ナトリウム血症の補正ができる
水負荷試験で異常結果
体液量正常な低ナトリウム血症におけるADH値の上昇
(尿浸透圧)
実測の場合は実測値を使って
そうでない場合は、(尿比重-1)×0.35 で計算します。
尿比重が1.020なら、(1.020-1)×0.35=700
約700mOsml/Lと近似できます。
もう一つは、
http://www.nanbyou.or.jp/entry/211 の、認定基準のPDFから参照することができます。
主要項目
(1)主症状 脱水の所見を認めない
(2)検査所見
@低ナトリウム血症:血清ナトリウム<135mEq/L
A血漿バソプレシン値:血清ナトリウム<135mEq/Lで測定感度以上である
B低浸透圧血症:血漿浸透圧は280mOsm/kgを下回る
C高張尿:尿浸透圧は300mOsm/kgを上回る
DNa利尿の持続:尿中ナトリウム濃度は20mEq/L以上である
E腎機能正常:血清クレアチニンは1.2mg/dl以下である
F副腎皮質機能正常:早朝空腹時の血清Cortisol>6以上
参考事項
(1)血漿レニン活性は5ng/ml/h以下であることが多い
(2)血清尿酸値は5mg/dl以下であることが多い
(3)水分摂取を制限すると脱水が進行することなく低ナトリウム血症が改善する
というのが基準です。
ADHの値が、測定感度以上であること、高いというのはどういうことかというと、
ADHの分泌量は、普段は血清の浸透圧により規定され、下記のように分泌されます。
それよりも多い、という状態は、不適切に分泌していると考えられるという事です。
診断の中で一番難しいことは、患者さんの体液量が
・減少していない
・増加していない
と判断することです。
その中で役立つ所見が、BUNの低下やCreの低下、UAの低下
(若干の希釈を受けている)が参考所見にあります。
ですが、
病歴や身体所見で、体液量減少・増加をある程度判断するのが最も大事です。

合わせて読みたい関連知識
ナトリウムの公式
実際の低ナトリウム血症の患者さんを考える上で役立つナトリウムの公式です。
ナトリウムの公式の数学的な証明(解説)
上記の式の解説を読むと、ナトリウムの理解はより深くなります。
便利で安全な低ナトリウム血症の治療方法
すごく便利なナトリウム補正の方法です。
ADH分泌は、必ずしも不適切ではない
すごく便利なナトリウム補正の方法です。